●51号のひと
トキワ荘別館は木造2階建てのアパート、いわゆる木賃アパートというやつです。
共同玄関を入ると、部屋の数ぶんの下駄箱があってそれぞれスリッパに履き替えるのです。入居者はたいてい単身者ですが、学生はほとんどいませんでした。
この共同玄関のすぐとなりにあった51号室に住んでいたおばあさんは、いつも自分の部屋のトビラを10センチほど開けていました。暑い日も寒い日も開けていました。そして、そのトビラのおくから、じっと玄関の方をみていました。いつも、ぼんやりと立って(疲れないのかな)、トビラのすきまから玄関を観察していました。
このおばあさんには話し相手がほとんどないらしく、わたしが帰宅して玄関に入っていくと、すぅーっとドアを開けて廊下に出てきます。あたかも偶然のようなそぶりで出てきて、それでしばらく立ち話となるのでした。いつもちぐはぐな会話でしたが、あいさつに加えて二言三言、あるいは何分か話し込むこともありました。
おばあさんが、わたしにサラダ油をプレゼントしてくれたことがあります。わたしの部屋は2階の62号室でしたが、ある夜ノックにこたえてドアを開けると、サラダ油の缶(缶でした)を持っておばあさんがたっていました。押入れの中から出てきたからアナタに、と言われてありがたくいただきました。いつのものかも分からなかったけれど、使いましたよモチロン。
なんだか、アメリみたいな(?)おばあさんです。いまどうしてるかな。
Comments
ひじょ〜〜に興味がわきます
Posted by タカハシ at 2007/09/05 01:33 AM
でもほんと、アメリみたいなおばあさん、いるかもよ〜。わりと身近にいたりしないかしら?
Posted by 麦 at 2007/09/06 09:33 AM