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2008.06.29 Sunday

鼻のあるトマトのお話



(あらすじ)
1.
トマトってやつはどうにもホレっぽい
そして短気で怒りっぽくまたよく笑う
四六時中恋をしていておしゃべりや歌を楽しみ
ほとんど眠らぬうちに赤くなる

そんな中で彼はほかの連中とは違っていた
まじめで冷静でストイックだ
恋に明け暮れるトマトたちの中
彼だけはじっと自然の摂理を観察していた

2.
彼には自信があった
なぜなら彼には鼻がついていたのだ
ほかのだれにも鼻はなかった
彼はそのすばらしい鼻で鋭く科学を追求していた

彼は自分には恋をする時間も余力もないと考えていた
彼だけに与えられた才能があった
ほかの連中が恋にそのエナジーをすべて注ぎ
熟れてもがれていくのを知っていた

3.
やがて雨の季節がやってきたが
トマトたちは瞬間の晴れまにも人生を謳歌していた
夕方雨がふりはじめて夜半にやんだある夜
ささあっと流れ散った雲のすきまから月があらわれた

それは今年一番の白く輝く月だった
まじめで冷静でストイックで鼻の利くトマトは
月と自分のあいだの物理に思いを巡らせた
明け方月は去り彼は真っ赤になった

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