●邦画
『黒い十人の女』につづき、『浮草』(1959年、監督 小津安二郎)を観ました。最近Gyaoで放映している古い邦画にはまっているのです。
邦画には詳しくないし、そもそも映画にも詳しくないので、恥ずかしい話、小津安二郎は「おづあんじろう」と頭の中でずっとそう読んでいました。今更「やすじろう」とインプットしても頭の中ってなかなか更新されないんですよねー。年のせいかしらねー。
読み間違えたまま覚えてしまっている言葉ってけっこうあると思います。「みぞうゆう」と言ってしまった麻生首相は全国ネットでお気の毒でしたけど、自分にもけっこうあるなあ、読み方分からないけどとりあえずこうやって読んでおこう、みたいなの。いかにもな生物の名前や豆知識的なのではなくても、ものすごく日常ユースの言葉でもとくに書き言葉にはありがちで、パソコンで変換しても出てこない時など「あー間違ってるな」と思いながらも調べないままだったりする。
それはそうとして、『浮草』もとても面白かったです。
音楽や、台詞や場面転換のテンポの良さや、「いろいろあるけどとりあえずまー」みたいなノリは、まるでイタリア映画のようでした。って、このあいだは『黒い十人の女』をフランス映画みたいとか言って、フランス映画やイタリア映画の何を知っているかと聞かれるととっても困るんだけど。
『浮草』では、冒頭から「あ、なんだかフェリーニみたいかも。そういえば音楽もエンニオ・モリコーネみたいかも」なんて思ったのでした。いやはや。邦画おもしろいなあ。人情モノでもいかにもハイここで泣いてちょうだいよと仕掛けてこないのも良かった。
とくに、最近観た二つの映画『黒い十人の女』と『浮草』は、カメラワークがすばらしくて感激でした。モノクロで、役者の表情から背景や小道具までカチッと計算された画面、光と影のコントラストやグラデーションが絶妙な『黒い十人の女』は小林節雄、一方、カラーフィルムで写す柔らかい光や、ビビッドだけど抑制された色合い、動きのない場面での空気感とかロングショットが印象的だった『浮草』は宮川一夫。
これまで、映画のカメラマンて監督の言う通りにカメラを操るだけの存在程度にしか思っていなかったけど、それは大きな間違いだったにちがいない。実際映画製作の現場がどんなものかは知らないですが、きっとカメラマンの力量ってものすごく重要なんだろうと思いました。
その後おなじくGyaoで『王子と踊り子』(1957年、監督 ローレンス・オリヴィエ)を観たけど、カメラワークには何の感動もありませんでした。マリリン・モンローは抜群にかわいかったですけど。
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