若いご夫婦がマイホームを建てようというとき、和室の予備室を希望されることが少なからずあります。当面は客間として利用し、将来的には親との同居ができるようにと考えられることが多いようです。親がまだまだ元気で夫婦それぞれの両親が健在な場合でも、いろいろなケースを想定し、せめて和室を一部屋提供できるようにと考えます。
客間としての予備室であれば条件はさほど気にする必要はありませんが、年老いた親との同居を想定する場合、その部屋はかなりの条件を満足する必要があります。ざっとあげても、トイレや浴室が近いこと、玄関に近くて生活動線があまり交錯しないこと、プライバシーが保たれること、収納が確保でき、1階であること。そして、友人たちと気さくに交流ができ、日当りがよく、趣味を楽しんでくれれば・・・と親たちへの思いは尽きません。もちろん介護が必要ならば少しでもそれが負担の少ないものであるように工夫されるべきです。
さて、そんな風に、まだ起こっていないずいぶん先のことまで想定して思い悩みながら、設計プランは作られていくのですが、大事なことは、家が建って当面のあいだそこで生活するのは、他の誰でもなく建て主さん一家だということです。家族にとって、今必要なことを、形にしなければなりません。
1階に設ける和室は、家族の生活にとって要の部屋になるはずです。家族室に隣接した日当りのよい和室は、目が届きやすく、乳幼児のいる家庭なら遊び場にもお昼寝に向いています。子どもたちが小さいうちは布団を並べて家族の寝室にもちょうど良いでしょう。子どもは体温が高く新陳代謝が激しいですから、たかがお昼寝でも敷き布団がぐっしょり濡れるほど寝汗をかいたり結露が生じたりします。板の間に布団を敷くよりは畳の方が良いですね。
小学生ぐらいであれば、2階に独立した子ども部屋を設けるよりは、和室に勉強机をおいてあげて、宿題をしたり持ち物の管理をできるようにしてあげても良いかもしれません。その頃までは、いずれ子供部屋にと思って用意している2階の部屋(あるいはスペース)が客間として使えるでしょう。
上に掲載した平面図は、基本設計時にああでもないこうでもないと第1案から第5案まで作成したプランのひとつです。子育てのスタートを切ったばかりのクライアントご夫婦は、将来の親との同居・介護も大切なキーワードと考えていました。実現したプランは一番最初にプロポーザルした案に近い形でまとまったのでしたが、1階の和室についての考え方は一貫して上記のように考えて提案しました。遠い将来か近い将来かもわからない、起こるか起こらないかもわからないことにあまりとらわれすぎず、でもそれはそれとして想定の枠内に置きながら、もっと「今」や「近い将来」に「起こりそうなこと」をたくさんイメージして設計に反映することを大事にしています。